皆さんはプレイボーティングとはいったいどんなものか知っているだろうか。前回のコンテンツで少しプレイボーティングのことについて触れたが、改めて話しをしようと思う。
プレイボーティング(Play boating)とは言葉どうりプレイ(遊び)ながらカヌーやカヤックでダウンリバー(川下り)をしたり、特定のスポット(川に点在するホールやウェーブ)まで車などで乗りつけて、遊ぶというもので、海外ではパーク&プレイ(park&play)とも言う。
その他にもいろいろな遊び方のスタイルはあるのだが一番ポピュラーなものは、やはりダウンリバーしながらのプレイボーティングということになる。川を下る楽しみもあるし、また川の途中には何かしらのプレイスポットが点在しているからだ。
だいたいのカヤッカー達は休日を利用して「日帰りプレイボーティング」というものをしている。日帰りというとなんだかあわただしいイメージがあるが、関西圏にお住まいの方なら3時間くらいの移動時間があれば中部地方の日本でも有数のカヤックゲレンデとなっている川に行くことができ、日帰りでも目的地までの移動時間などを差し引いても結構遊べたりする。もちろん朝は早いが…。
日帰りだからカヤッカー仲間と打ち合わせ、帰りの時間と体力を計算して、下ろうとする川のベストコースをチョイスする。
その川には適度に瀬が有り、プレイスポットがあり、休憩する所が有り、(トイレなど)結構快適に遊ぶためにはこれだけの情報が必要になる。
せっかく川に行ったのに、渇水でほとんど水が無かったり、あるいは連日の雨やその他の事情で水位が異常に増え、いわゆる危険水位の状態だと、遊ぶというよりはほとんど冒険(エクスペディション)の領域に入ってしまう。もちろんそれを狙って行くカヤッカー諸氏も大勢いるのだが、相手は自然である。慎重に慎重を重ねても事故がおこることもある。
だからというわけではないのだが、そういう場合に直面したときにやめる勇気が絶対的に必要だと思う。
話がそれたが、これらのことを考慮して行く川やスポットをチョイスすればいい。
もちろんパーク&プレイ(僕たちは単にスポットと呼ぶ。)のみでもいいし、気に入ったウェーブで日がな一日サーフィンしたり。
河原に上がって、カヤックの仲間達とカヤック談議をしたりと、本当に遊び方は人それぞれだ。
有名な川の有名なプレイスポットには毎週のようにカヤッカーたちが集まっていて、彼らはインターネットなどで、その日の河川の水量などの情報を集め、ホールやウェーブの状態を確かめてから来る。
もちろん人によって目的は様々だ。だから行き当たりばったりというケースの人もいる。私はどちらかというと後者のほうだった。
夏場などは遠征(少し遠くの川)でキャンプしながらのカヤックをしている。
夏場の時期になると、カヤッカーやカヌーイストの誰もがキャンプ道具一式とカヤック・カヌー道具一式を車に積み込んで、必ず1度は行く。
その夏場の一番のおすすめの川は三重県の北山川だ。
この川は普段は流れがあまり強くないのだが、夏場の一定期間(5月~9月)のみ観光筏の運行の関係で上流のダムからの放水がありカヤッカーにとってはまさにホワイトウォータパラダイスになるのだ。(誰かがそう呼んでいた。)もちろん水質も抜群に良く、そしてそのロケーションの素晴らしさは群を抜いる。
またこの川の下流域には有名な「瀞峡めぐり」のジェット舟も運行している。
自然の造形美の象徴ともいえる瀞峡の峡谷は見る者すべてを圧倒する感じだ。特に小さなカヤックに乗って瀞峡を漕いでると自然のスケールの大きさをまざまざと感じさせられるし、いかに自然のなかで自分が小さく、無力であるかを痛感させられる思いがする。
そんなふうで、上流域に飽きたら下流域を下るというてもあるわけだが、間違ってもこの川は初心者にはお薦め出来ない。それは上流域は観光筏に注意しなければならないし下流域は瀞峡めぐりのジェット船が運航しているので充分な注意が必要となる。これは普段近県の川でカヤックをしているときにはほとんどないことといってよい。
それに上流部のオトノリ~小松までの区間は一度カヤックで下り出すと、「リタイヤして岸に上がる。」ということがかなり難しくなる。だからしっかりとしたカヤックの操作テクニック、ロール(ひっくり返ったとき、カヤックから出ないでおきあがること)、そしてルート・ナビゲーション等のスキルが絶対的に要求される川だからだ。
またプレイスポットの話に戻りたい。ダムの放水のおかげで、増水期を除いては近畿圏内ではめったにおめにかかれないほどの綺麗なホール(ぐるぐると巻き返し波が回っていて、その中にカヤックを乗り入れると、カヤックが流されずに止まってしまう。ストッパーともいう)やウェーブがいくつか点在していて、まったく飽きることのない川だ。
蝉の声と前方から聞こえてくる「ゴ~っ」という瀬の音が渓谷に反響している様は、瀬に入る緊張感と自然に触れている心地よさが共有している、至高の瞬間だ。
ぼくはここ数年来、夏場になると、恋しい女性に会いに行くようにこの川に通い続けている。