日本の川の上流域の特徴は川幅が非常に狭く、ゴツゴツした大きな岩が点在し、それにより流れが複雑で急になっている。
山からしみだした冷たく美しい水がそのまま川に注ぎそれらが集まって流れを成型し水温も中流・下流域に比べかなり低く、川の両側の岸が森林で覆われているため、日中でもあまり日が当たらないところが多い。
そんな厳しい環境でも魚や動物は結構住んでいる。川に棲む昆虫の中にはいろいろなタイプがあり、水中や川底に産卵し生まれた幼虫は水中で育ち成虫になると空中に飛び立っていくトンボ、カゲロウ、トビゲラ、カワゲラ、ユスリカなど。またゲンゴロウのように幼虫時代から成虫になっても一生を水中で過ごすものもいる。
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学名:Calopteryx atrata
分類:トンボ目 カワトンボ科
全長が55~65mmほどのトンボで翅が黒いのが特徴である。飛ぶときは他のトンボとは違い蝶のようにひらひらと舞うように飛ぶ。成虫は7~8月にかけて多くみられ、羽化後の若い固体は薄暗い林などで生活するが、成熟すると再び水辺に戻ってくる。他のトンボと同様縄張り意識が強く水辺の岩などにとまり、縄張りを誇示する。産卵は水面近くの水生植物に産卵する。幼虫は写真のように細長い形状をしている。比較的川の上流部に生息しているが、中流域でも見ることができる。
学名:Pelteobagrus nudiceps
分類:ナマズ目 ギギ科 ギバチ属
全長が25cmほどにもなる淡水魚。生息域は主に湖沼や川の中流域などを好む。
体色は黒褐色で暗い黄褐色でナマズ目の特徴である髭が8本ある。名前の由来とされているギギは驚いたときに胸びれの棘と基底部の骨をすり合わせ「ギーギー」といった音を出すところからきている。
近畿地方より西側に広く分布している。基本的に夜行性で、小魚、水中昆虫、エビなどを食べる雑食性である。
学名:Phoxinus oxycephalus jouyi
分類:コイ目 コイ科
全長10cmほどの淡水魚。河川の上流域から中流域の流れの緩やかなところに生息している。
体色はやや褐色で、小さな金色の斑点がある。アブラハヤ同様鱗は大変小さく、身体の表面はぬめりがある。アブラハヤは尾柄が細いのに対しタカハヤは尾柄が太っくなっているのが特徴である。
ヤマメやアマゴよりも下流に生息し、カワムツよりも上流に生息していることで棲み分けしている。
食性は雑食性で、主に昆虫、付着藻類、植物種子などを食べる
産卵期は春から初夏にかけて。昔からあまり食用にされることはないが、綺麗に体のぬめりをとって調理すると、天ぷらや唐揚げにして食べることができる。もちろん綺麗な川で取れたタカハヤの場合。日本固有亜種。
学名:Buergeria buergeri
分類:両生綱無尾目アオガエル科 カジカガエル属
川の渓流に生息し、フィー、フィー、フィーと実に綺麗な声で鳴く。
体長は約5~7cmで身体は平べったい形状をしていて、体色は灰褐色。ところどころに川の岩のような模様があり保護色になっている。
他のカエルと同様周の環境に応じてある程度身体の色を変色させることができる。繁殖は5~7月にかけて渓流沿いで行われ、石の下に卵を産み付ける。食性は主にクモなどの小さな昆虫を食べる。
学名:Plecoptera
分類:襀翅目(せきしもく) カワゲラ
身体はやや扁平で、細長い身体をしている。4枚の翅は身体の割に大きくなく、トビゲラに比べ弱々しい感じがする。
ピューパ(蛹)の時期がなく、トンボなどと同じいわゆる不完全変態の昆虫である。幼虫はトンボのヤゴに似ている。英名はストーンフライ(Stone fly)といい、その名のとおり岸や岩に上がってハッチ(羽化)する。
大型のものは初夏にハッチするが、小型のものは春先からハッチする。フライフィッシングや渓流釣りには欠かせない存在である。
学名:Trichoptera
分類:カワトンボ科 アオハダトンボ属 トビケラ目(毛翅目)
一見ガに似ている川の上流部に生息している住む昆虫。
ガにはにているが翅は燐粉に覆われているのではなく刺毛に覆われている。日本では400種以上の生息が認められている。2本の長い糸状の触角を持ち川の大岩などに止まっている姿をみることができる。
幼虫は細長いイモムシ状の姿で石についたコケや水底に溜まった落ち葉などを食べて育ち完全変態をする。
水中の岩などに作った巣の中で幼虫は蛹(さなぎ)になり、羽化の際は、蛹のまま水面まで泳ぎ、水面で成虫になり、飛び立つ。
学名:Calopteryx cornelia
分類:カワトンボ科 アオハダトンボ属
翅が褐色の日本に生息するカワトンボの中では最大の大きさを誇る。
主に川の上流部の渓流に生息する。生息域は本州全土に分布しており、5月上旬から9月末頃まで見られる。
学名:Salvelinus leucomaenis japonicus
分類:サケ目 サケ科 イワナ属
人がなかなか入れない、川の最上流部に生息していて、警戒心がとても強く、容易に釣ることが出来ないため、「まぼろしの魚」といわれるほどの魚。
身体には綺麗な斑点模様があり、9月下旬から11月上旬頃に流れの緩やかな砂礫底に産卵する。食性は肉食で、水生昆虫や流れてくる陸生昆虫などを主なエサとしている。
学名:Geothelphusa dehaani
分類:エビ目(十脚目) カニ下目 サワガニ科
日本固有のカニで、一生を淡水で過ごす純淡水性のカニ。
川の上流部に生息し、平たんなところより、滝などが流れ落ちている岩場などを好む。
食性は雑食性で、水生昆虫や藻類、ミミズなど何でも食べる。
学名:Oncorhynchus masou ishikawae
分類:サケ目 サケ科
アマゴが降海 (海に行って)大きくなったものが、サツキマス。
大きい物では体長が30~40cmに達し、食性はカゲロウ、トビゲラ、昆虫、小魚などを食べる。
もとのアマゴとは似ても似つかない姿。年々このサツキマスの遡上が少なくなっている。
学名:Megaceryle lugubris
分類:ブッポウソウ目 カワセミ科
体長は35cmほどで、ハトほどの大きさの鳥。
日本のカワセミの仲間では最大級の鳥で、特徴としては背中側の白黒の細かいまだら模様と頭部の大きな冠羽。
エサを採るときには、石や枝の上から水中めがけて飛び込み、小魚や水生昆虫を捕食する。
空中でホバリング(滞空飛行)しながら水に飛び込むこともある。
学名:Cinclus pallasii
分類:スズメ目 カワガラス科
全身が濃い茶色の羽毛でおおわれて、まるで小さなカラスのようだが、よく見るとカラスにはあまり似ていない。
実はカラスと名がついていてもカラスの仲間ではなく、体長は20㎝ほどで、尾っぽを上下にピクピクとふるながら、岩から岩へと移動していく仕草がなんとも愛嬌がある。水に潜って水生昆虫や小魚を捕食する。
学名:Ephemeroptera
分類:カゲロウ目 蜉蝣目
成虫は細長く柔らかい体をしていて、指などで強くつまむとつぶれてしまうほど貧弱な虫でトンボによく似たフォルムをしているが、しっぽの先から長く突き出した2~3本の尾がある。大きな目もトンボと似ている。
触角はトンボと同様に短い。カゲロウはその寿命が短いことでもよく知られる。
カゲロウは、トンボなどと共に、昆虫の中では最も古い系統に属するもので、古代化石などにもよく登場し、昆虫の中で最初に翅を獲得したグループの一つであると考えられている。
カゲロウの語源としてはギリシャ語で ephemera「一日の存在」ということらしい。幼虫時代はトンボの幼虫のヤゴと同じように水中で生活している。
川の瀬などにある石を裏返すとカゲロウの幼虫を見ることができる。
食性は、主に川の石などについた藻類などを食べているが、その他にも植物遺骸やデトリタス(水中に沈積している有機性の浮泥または水中のプランクトンなどの水生生物の死骸、分解物、排泄物の総称)などを食べるものや捕食性のものまで実に様々である。また幼虫はその種類によってその環境に適応した様々な姿をしている。
例えば流れが速い渓流などの岩の裏に生息している種類などは、身体が平たくできており、水の抵抗を受けないような身体つきになっている。
また流れの穏やかな所に生息するものは、円筒状の身体をしており、足はスマートで体を少し持ち上げたような姿をしている。
また他の水生昆虫を捕食する種類は、前脚が大きくなっている。実に同じカゲロウの仲間でも様々な種類がいる。
成虫は岩などに止まるときは、翅を蝶のように垂直に立てる。(トンボのように開いたままとまらない。)羽化は初春から晩秋にかけておこなわれるが、これも種によって時期的な誤差があるようだ。
調べてみるとカゲロウは一端幼虫から成虫によく似た亜成虫というものになり、飛んでいって違う場所で改めてまた脱皮をして成虫になる。つまりカゲロウは翅が伸びた後にもう一度脱皮して成虫になる。このような変態をする昆虫は他にはいないことも興味深い。
私たちとカゲロウで最もなじみ深いものとして、フライフィッシングがある。というのはカゲロウは幼虫も成虫とも渓流魚の絶好の餌であり、フライフィッシングにおいては欠かすことの出来ない存在だ。
フライフィッシングのフライ(疑似餌)などもカゲロウの形のものがほとんどで、その色や形など実際にその川に生息しているカゲロウの幼虫や成虫を研究し制作しているフライフィッシャーの人が大勢いる。
学名: Family Calopterygidae
分類:トンボ目 カワトンボ科
体長5cm~6cmくらいのトンボで、他のトンボに比べるとややスリムな体つきをしている。
本州~九州まで広く分布しており、平地から山地の緩やかな流れの川や渓流の周辺などに生息する。
川面(かわも)ギリギリをゆっくり、優雅に飛び、岩などにとまるときは蝶のように羽を閉じてとまる。翅の色に特徴があり、オスは有色翅(オレンジ色)のものと無色翅(透明)なものがいる。ちなみにメスの翅は透明。
個体におけるオスの翅の色の違いは繁殖期における行動パターンが違いに現れる。有色翅(オレンジ)のオスは繁殖期になわばりを持ち、そのなわばり内に入ってきたメスと独占的に後尾をする。
無色翅の方のオスは有色翅のオスに気づかれないように近くに潜んでいて、こっそりメスと後尾をする。つまり個体的には有色翅のオスのほうが強いわけであり、子孫を残すのにも有利と考えてしまうのだが、実は無色翅のほうも数的には有色翅に劣っていない。本来トンボの習性としてはなわばり意識が強く他のトンボが自分のなわばりに入ってきたら追い払うものが多いが、無色翅のほうはそれをしない。食性は小型昆虫などを食べている。出現の時期は4月~7月頃。
カワトンボの分類としてはヒガシカワトンボ、ニシカワトンボ、オオカワトンボ
またよく似た種にミヤマカワトンボがある。
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